雌阿寒岳に登頂
快晴の登山日和
2日目の朝(6/18)は快晴だった。湖畔の宿から、雄阿寒岳がハッキリ見えた。
登山日和なので、喜んで雌阿寒岳の登山口に向かう。登山口は3つあるが、北海道のヤマは熊が怖いし最もpopularな雌阿寒温泉登山口をchoiceした。前日に何人かに訊いてもここがオススメだと云うし、ヤマ屋のtaxi運転手さんも同意見だったのだ。
途中、車窓にキタキツネを発見。毛があんまり綺麗じゃないけど、それは冬毛から夏毛に生え変わる途中のため。雷鳥やウサギでも同じだ。
<キタキツネ>
登山口より
登り始める。シダの緑も若々しい。ゴゼンタチバナも出迎えてくれる。
<シダが多い> <ゴゼンタチバナ>
この登山道はかなり親切だ。ピンクの紐でマーキングしてくれているが、本州のヤマでみるものよりもかなり間隔が詰まっているので、まず道に迷う心配がない。それと、1合目から山頂まで10個の案内板が全て掲げられていた。
<若葉が眩しい> <松の枯れ木>
3合目を過ぎると、視界が開けてくる。樹林帯の終わりが近いので松の背丈がほぼ私と同じかちょっと高いくらい。ただ、ゴツゴツしたものでなく登りやすいガレ場だった。ミヤマハハコクサに似た花は初めて見た。
一瞬、山頂らしきものが見えた。でも、これは山頂ではない。
<エゾイソツツジ> <雌阿寒岳の中腹にて>
ガレ場が続くが、下を振り返ると眼下には爽やかな景色が広がる。もう一つの登山口にあるオンネトーの青い池が見えるのだ。
5合目を過ぎた辺りでは、もう完全に森林限界を抜けていた。赤い実を付けた松が目立つ。
<眼下にオンネトー> <赤い実の松>
陽気なシンガポール人ファミリー
イスラエル人カップルとすれ違う。女性はちょっとバテ気味だった。後で、私が山頂から下り始めて10分くらいした所でもう一度彼らとすれ違っている。
<眼下に緑がこんもり> <登山道は既にガレ場>
6合目でサングラスした外人ご夫婦と子供が5人が休憩していた。旦那さんと話してみる。
G(以下、外人): シンガポールから来たんだ。何度も日本に来ているけど今回は北海道only
W(私): 自然が好きなんですね
G: イヤ、自然も登山も好きじゃないよ。でもワイフが自然好きなので仕方ない。俺は彼女のfollowをしているだけだよ。(ハーハーと息が上がっているジェスチャーを見せる)
W: (笑)
G: 俺は温泉と食い物がお目当てなんだ。
W: 寿司、天ぷら、いくら、……
G: そうそう。カニ、ウニ、……(笑)
雌阿寒岳の山頂へ
9合目まで登ると、爆裂火口を覗き込める。この爆裂火口は、八ヶ岳の硫黄のそれよりデカイし、未だ噴煙を上げている。
山頂からかなり下にえぐれたようになっていて、その外周を回り込むように進んでいくと山頂に辿り着く。
<あともう少し> <雌阿寒岳山頂>
実はこのヤマは1つの峰ではなくて、10個くらいの峰の総称らしい。直ぐ右側の傍に穏やかな峰が見えるのが阿寒富士で周囲に2~3の噴煙あり。左手には更に大きな乾燥した大地が広がっており、何か所かから噴煙が上がっている。安達太良山に登る時には奥岳や勢至平方面から登るので、沼の平方面を直に見た事はない。でもそれと同じような景色が今ここに広がっていた。こういうのを真近に見ると、地球は生きているのかと実感する。
<<阿寒富士>>
<<雌阿寒岳山頂より>>
宿でお土産にもらったメロンパンをランチ代わりに食べる。山頂は遮るものがないので風が冷たい。もうちょっと山頂でゆっくりしたかったけど、慌ててポンチョを羽織って下山した。
雌阿寒岳は日本百名山の1つ。期待通りのヤマだった。コースタイムは登り2:30、下り1:40、計4:10と書かれていたけど、私は下りが遅いので登り下りとも2:15、計4:30だった。クマに会う事もなく、北海道で初めての登山を無事成功裡に終える事ができた。
クマの話など
雌阿寒温泉登山口まで送ってくれたタクシー運転手さんの話は凄かった。ご自身がヤマに登られるので、自然に関する経験が豊富。いろいろと知恵が付いた。
先ず、クマ対策。クマと目を合わせたまま後ずさりするってのは良く聞く。とにかく背中を見せて逃げてはダメだと言う。流石にそれは知っている。
この日初めて聞いたのは、杖の使い方。杖でもストックでも良いけど、襲ってきたクマの顔をめがけて突くといいって言うけど、そんな事本当にできるのか疑わしい。ドライバーさんが言うには、杖の先を自分の踵でシッカリ押さえたまま、もう片方を上に向けて手で握っておく。で、襲い掛かってきたクマの喉元にクマの勢いのまま突き刺すのが先人の知恵だと言う。確かに、冷静に考えると突き刺すよりは突き立てて相手の力を上手く利用する方が勝てる確率は高そうだ。
本州ではツキノワグマより北海道のヒグマの方が怖いと聞く。でも、運転手さんは「逆だよ。本州のクマの方が性格が悪い」とか。この真偽はなんとも判らない。クマがザックに興味を持ったらもうその荷物は命と引き換えに置いていくしかないとか、松の木に登ればクマの体重だと支えきれないので追って来られないとか、これらはそうだと思うけど実は木登りできないなあ……。
それと、この4日間にいろいろな人の話を伺ったので誰に訊いたか判然としないが、熊よけの鈴の効果は疑わしいので、自分で曲がり角で手を叩くとか大声を出すとか自衛した方が遭遇する確率を抑えられるとか。
<登山道の岩場に咲いていた花> <ベンケイソウの一種か>
もう一つ驚いたのが、冬の凍った湖面で落ちた時の対応。私は志賀高原で凍っていなかった池に落ちた(これだけで記事1つ分は十分に書ける)事がある。しかも這い上がってから2歩歩いてもう一度落ちた。運転手さんも子供の頃に落ちた事があるとか。で、そういう時は這い上がってから氷の上に立ってはダメ。腹ばいになって圧力を分散して岸まで辿り着かないと何度でも落ちる、と言われた。言われてみれば尤もだけど、いざその場になってみるとなかなかできないなあ。やっぱり子供の頃にそういう経験をしておくと、体が自然と覚えているものなのか。
他にも目からウロコの話を伺ったのだが、既に記憶が朧げになってきた……。あと、トムラウシ山とか緑岳、白雲避難小屋、幌尻岳など道央のヤマの話題が多かったなあ。