インフレ国を旅してみて
気絶しそうなインフレを起こしている国がある。それは、数パーセントのインフレではなく100倍とか1000倍って暴力的なスパンでインフレが進行する状態。第一次世界大戦後のドイツがそんな状態に見舞われたと習ったが、歴史上の過去形の事象だけではない。
トルコリラはゼロがズラズラ並んでいる
私が実際に訪れてみた国でもいくつかある。最初にビックリしたのはトルコTurkeyだった。今でこそトルコリラは安定しているように見えるけど、私が20世紀の終わり頃に観光した時には、ジュース1本に10万TL(or100万)トルコリラを支払っていた。一瞬自分がお金持ちになった錯覚を覚えるのだが、そんな事はない。その国の通貨に信用がおけなくなっているのだ。
感覚的な記述だと分かりにくいので、Wikipediaを参照してみる。同サイトの記載によれば、旧トルコ・リラはこんな推移を辿っていた。
1984年 1USD= 442TRL
1994年 = 38,410TRL(1.1%)
2004年 =1,511,631TRL(0.03%)
即ち、20年間で1万分の1レベルに減価していた訳だ。
<インフレでゼロがずらずら並んだトルコリラ。1998年頃>
南米ベネズエラも混乱していた
南米のベネズエラVenezuelaも凄まじかった。10数年前も今もハイパーインフレでかなり困っている筈。ここ最近でも5ケタのデノミを実施すると新聞報道があった国だ。私が訪れた2003年頃には反米派のチャベス大統領が健在で、カラカスの街中では角材を持った労働者がデモ行進していた。貧富の差は激しいものの、こちらが観光客だと判ると角材を掲げながら笑って挨拶してくれるし、暗い印象は全く無かった。でも、地下鉄料金は3桁のお金で十分に払えるけど、食事や飲み物代は多分6~7桁の金額が必要なアンバランスな状態だった。最初、運賃240ボリバールを払うのに、1万か10万ボリバール札を出してもお釣りをくれないので不審に思った。手を出して要求しても素知らぬ振り。その時は理解できなかったけど、後で想像してみるに、きっと10とか100とかそんな細かな単位のコイン/お札が既に流通していなかったんじゃないか。
<2000年代前半のベネラエズ紙幣>
アジアだと
ハイパーインフレではないけど、こういうアンバランスはミャンマーMyanmarでも体験している。他の物価と異なり、渡し船の料金だけがケタ違いに安かったのを覚えている。
アフリカでもブ厚い札束の洗礼
西アフリカのマリMaliも酷かった。空港に両替所がない(ブースはあったけど昼間なのにcloseの看板)し、最初っからヤミでExchangeするしか術がなかった。100USD紙幣を1枚両替すると、厚さ20cmくらいのCFA(セントラルアフリカフラン)の札束に交換してくれる。CFAは、旧宗主国フランスの今は無きFF(フランスフラン)を100分の1に減価した植民地通貨だった。FFが消えてEURになってもCFAが生き続けているってのが不思議なもの。
<primitive感がハンパないCFA札。1999年>
自国通貨をなかなか受け取りたがらなかったジンバブエZimbabweなんかも、ゼロの数が数え切れないハイパーインフレ国だ。私が訪れたのは2001年だったが、空港の両替所とビクトリアの滝近くの両替所で交換レートが2倍くらい違っていた。こうなるとみんな安定したUSDでやり取りするしかないのだ。
2019年1月の新聞の国際面にジンバブエとベネズエラの記事が出ているな、ってのもちょっと気になった。
それから半年。今度はアルゼンチン
それから半年して今度はアルゼンチンだと言う。私はアルゼンチンに足を踏み入れた事がないけど、少なくともここ10年以内に2回目の経済破綻ではないか。少なくとも私の記憶の中で掠っているくらいの範囲で起きた話が、まただと言う。
9/3付け日経新聞によると、2年前に発行したドル建て100年もの国債が額面100に対して僅か37.5に下落しているとか。数字で聞いただけでも厳しい。
以下にコピーしてきた為替レートのグラフも悲しい。あまりにも悲し過ぎる。もし円ドル相場だったら、1ドル=100円で両替できていたものが僅か4年で600円(1/6の価値にdown)になったって事と同じ。これでは誰も自国通貨を信用しなくなるヨ。
新聞に依ると、アルゼンチンは19世期の建国以来今日までに、なんと8回もデフォルトを経験しているとか。不安の連鎖が続いている以上、もう大統領選の結果次第で上手く転がるってものでも無いだろう。次の次を考えないと。
でも、実際に彼の国で暮らしている人達は大変だと思う。とにかく札束がブ厚くなるし、お釣りは出てこないしtouristだって想定外の事にinvolveされる。上手く文章を結べないけど、早く落ち着く事を願っています。
【2022.6.30追記】1984年~2004年にかけてのトルコリラの減価について記載した。