ドロミテ旅⑧(補足であれこれ)

OBB

一見するとQBBと読みたくなるけど、プロセスチーズの話じゃない。ロゴマークだとO(オー)の右上にカンマが入っているのでOBB、オーストリアの鉄道の話だ。

<OBB>

日本で言う所のJR。ただ、ヨーロッパの内陸国なので国内線と云うよりも、ハンガリーやドイツ、スイスなど国境を越えて特急列車が走っている。オーストリアにいてもミュンヘン行きとかチューリッヒ行きの電車を何本も見た。私はトレ・チーメに近いDobbiaco(伊)からそのまま東に進んでLienz駅(墺)に入ったけど、Bolzano(伊)からそのまま北上していればインスブルックInnsbruck(墺)の街に直通列車で入国していた事になる。

・切符の買い方
これはイタリアと全く同じで、とにかく判り易い。イタリアTREITALIAの券売機と操作方法は全く同じだし、慣れないドイツ語でLienz駅のクールな駅員さんと話すよりもラク。

<券売機> <Bad Gastein到着時刻を案内>

・社内モニター
電車の中で天井に据え付けられたモニターで到着時間を正確に知る事ができるのがありがたい。当初予定は18:16着だけど、遅れにより18:19の見込みと教えてくれる。

・指定席の案内
これはオーストリアだけじゃないけど、スイスやイタリアでも指定席は車両ごとではなく、席ごとに決まっている。日本だと車両ごとに自由席と指定席が分かれているので、空席があるのに座れないジレンマがあるけど、オーストリアなど欧州ではそんな無駄はない。
昨年のスイス旅では「A~B区間でReserved」と書かれたB5サイズの紙を車掌さんがベタベタと貼っていた。オーストリアでも液晶ディスプレイに「A~B区間でReserved」と表示されており、A駅より前とB駅の後では指定券がなくてもその席に座れる。これは合理的だ。

・乗り越して戻るルートを提案
SalzburgからMelkメルクへ行くのに、少し先まで特急で行ってそこからちょっと戻るルートを券売機が自動提案してくれたのが嬉しい。日本ではこうした経験がない。時刻表も上りと下りの2つのページを繰りながら調べないといけないので、ありがたかった。

・乗換接続は日本独特なのか
日本で地方に行くと本線とローカル線で乗換接続がスムーズに運用されている。例えば、東京から中央線で甲府に行って身延線に乗り換える場合、大抵はいいtimingで時刻表が組まれているので円滑に乗り継げる。仮に中央線がトラブルで遅れた場合にも、ローカル線は融通を利かせて出発時間を遅らせてくれる。

私はSalzburgザルツブルグからSt Poultenサンクト・ペルテン経由でMelkメルクに行きたかったのだが、接続時間が僅か5分しかない。普通なら間に合うけど、この日はSalzburgの出発時間が5分くらい遅れたのでギリギリ間に合わないかも。日本だと上手く調整してくれるのでそれを期待していた。と言うのも、St Poulten着が既に20:00過ぎで1本逃すと1時間遅くなってしまう。21時過ぎから宿探しするのはやはり億劫なのだ。なので、焦って乗換ホームに急いだけど時すでに遅し。Melkへ向かうローカル線は定刻通りに発車していた。

ヨーロッパ人の愛情表現(Dorf Gastein駅の若夫婦)

日本人は人前でそんなに親しげに振舞う事はない。この旅で出会ったヨーロッパならではの光景を2つほど紹介。

オーストリアのBad Gastein駅(ガスタイン温泉)からSalzburgに向かう途中に、Dorf Gastein駅(ガスタイン村)があった。その小さな駅で20代の男性が下車した。多分下車したのはその彼1人か他に僅かだったんじゃないか。すると、その妻思しき女性と小さな男の子と女の子が彼に近づいていく。男は子供を抱きかかえると笑顔で頬ずりしていた。もう一人と同じ挨拶を交わすと、今度は奥さんと駅のホームのすぐ向こう側で抱き合っている。人気も無く寂れた駅だったので車窓から良く見えた。日本では駅などであからさまに家族の愛情表現するのって憚られるし実際に見られるものでもないけど、こちらはオープン。素直に感情を行動で示すんだろう。微笑ましくもあり、また羨ましいような気がした。

夏の暑さでチョコレートが溶けるし、このお土産を渡せた人はほんの僅かでした……。

<ウィーン空港で買った菓子>  <トレチーメの最高地点>

ヨーロッパ人の愛情表現(トレチーメの老夫婦)

トレチーメはドロミテのハイライトで標高2450mくらい。その最高地点の辺りは屹立する岩の傍で砂礫が多くて足元が不安定になりやすい。丁度この写真のまんなかくらい。なので、そこから直進してトラバースするにしても、ちょっと10分くらい戻るにしても、その緩やかな傾斜は滑りやすいのだ。
【参考】トレチーメを歩く

そこまで白人の老夫婦が登ってきていた。顔を正面から見ていないが背格好からして70代だろう。最初は並んで降り始めたのだが、少ししてお婆さんの歩みが遅くなる。すると、お爺さんがサッと手を差し伸べて、手を繋いで安全な所までゆっくり降りていった。日本のヤマでも年配の登山者は多い。でも日本人の老登山者どうしでこういう光景を見た事なかったので、ちょっとイイナと思った。

トポロジカルなヨーロッパ地図

先日「数学セミナー」9月号をパラパラめくっていたら、ちょうど私の旅と重なるtimlyな絵が載っていた。1910年頃の地図を元にしたトポロジカルなヨーロッパ地図だとか。これは面白いので転載させて頂く。

<トポロジカルな地図>

トポロジー的に正しい絵なので、相互の位置関係が正確であれば十分って事だ。各都市や地域の面積とか距離を正確に反映したものではない。それと国名(オランダやデンマーク)と地域名(ブルゴーニュ)、都市名(パリやマルセイユ)が混在しているのはrigidに考えるとイイ加減だけど、地理とか勢力分布を考える人からみればロンドンとオランダが同じくらいの比較単位だったのでは、と容易に想像できるのも本当だ。

ザックリと4つの同心円で表現しておき、細部は更に幾重にも重層的に書き込んである。なかなか綺麗なのだ。ポルトガルやコンスタンチノーブル(Istanbul)の描き方も面白い。確かにスペインを通らないとポルトガルに攻め込む事はできない。勿論、海軍が強力であれば海から攻め込める、ってのも読み取れる。

勿論現代で考えれば、ミュンヘンがヨーロッパの真ん中にあるのには違和感があるけど、当時はそこが中心都市として栄えていたのかも知れない。あるいは位置的に丁度真ん中だから中心にplotしただけなのかも知れない。勿論正確なヨーロッパ地図を見ながら、別の人が作成すれば別のトポロジカルに正しい地図Bが完成するだろう。

この絵でイタリアを見ると、ピエモンテ、トスカーナ、ローマ、ベニス、トリエステ、もっと遠くにナポリとアプリア(プーリア地方)に分かれている。辺境のイギリスや西側のフランスと比べても細かく描かれているのは、それだけ相対的に重要な位置にあった証左なのか。

一方、オーストリアはチロルとウィーンの2つ。チロルがちょっと下に飛び出た凸型になっている。第一次世界大戦の前はチロル=オーストラリアだったようだが、戦後その一部がイタリアに割譲されたらしい。それが丁度でっぱりの部分に当たるのかも知れない。だから、100年経ってもBolzanoとかDobbiacoの人達はドイツ語を当然のように喋っているのだろう。私が歩いたエリアは南チロルでカラフルに「SUD-TIROL」と書かれたロゴマークが目立った。この電車の上の方のcolorfulなpaintもそれを模したものだ。
※SUDはフランス語の南。どうやらドイツ語も同じ表記みたい。

<SUD-TIROLを走る電車> ※再掲

旅の大まかな工程

<ラフなメモ> ※四角内の数字は宿泊日数。

お役立ち情報

大した事は書けないけど、この連載の締め括りとして何点か書いておきます。

【宿】
折角ドロミテの大自然を回るのであれば、なるべく小さな街に泊まりたい。Bolzanoはゆっくり滞在するには少々デカ過ぎて落ち着かない。Alpe di SiusiもDobbiacoもオススメ。

【SUDTIROLの交通カード】
Bolzano~Dobbiacoまでかなり広い範囲で使用できるのが、南チロル地方(SUDTIROL)で7日間使える交通カード。偶にロープウェイやゴンドラで使用できないケースがあるけど、毎回チケットを買う手間が省けるし、鉄道を使うとそこそこオトク感もあるのが嬉しい。他に、美術館や博物館の入場料もセットになった券も売られている。私は、BolzanoのTourist Informationで購入した。

<ドロミテで買った帽子>  <SUDTIROLカード>  

【ヤマ歩き】
ヤマ歩きは軽装で大丈夫。日本の登山は大きなザックを背負って登る。でも、スイスもイタリア、オーストリアも軽いナップサックだけあれば十分。と言うのも、ホテルがそこそこヤマの近くにあって重たい荷物はそこに置いていける。なので、着替えとポンチョと水だけナップサックに入れていけば、それで7時間くらいのtrekkingを十分にenjoyできる。

【行動できる時間はとにかく長い】
ヨーロッパの夜が更けるのは遅い。7月は特に日が長い季節だったけど暗くなるのは21:00過ぎ。なので、朝食とか雑事で時間が取られてしまい昼頃まで掛かってしまっても、時間はたっぷりある。なので午後からでもほぼ一日分は遊べる。但し、ロープウェイやゴンドラの営業時間には要注意。最終運行時刻をチェックしておかないとトボトボ歩いて降りていく羽目になるかも。

【イタリア語を話そう】
(当たり前だけど)なるべくその土地の言葉を話してみよう。特に英語が通じにくいエリアだ。と言っても妙に神経質になる事はない。ブツ切れの単語をポツポツ喋るだけでも大丈夫だし英語より相手に与える印象が違う。ビールの大ジョッキは「big」で通じなくてもgrande(伊)やgrosses(独)だとスッと通じる。遠慮がちに小ジョッキを頼む時には、piccoro(伊)やkleine(独)で大丈夫。イタリア語はグランデやピッコロなど案外と雰囲気で判る場合もあるんじゃないか。

【ドイツパンに注意】
旅の終盤に歯茎が腫れあがって痛くなった。ブリッジが1ケ所ありそこに元々隙間があったのだけど、糸ようじを使っても上手く掃除できずそこに肉の欠片が挟まった為だと思っていた。あまりに痛いので帰国翌日に歯医者に駆け込んだら、意外にも「おそらくドイツパンが原因」と言われた。硬いパンはそれなりに歯にdamageを与える、ブリッジしている箇所はやっぱり衝撃に弱いのだとか。確かにドイツパンはバケットより硬い。ヒマワリの種みたいなものを練り込んであるのも食べた。別に歯磨きをサボっていた訳ではないけど、帰国してからも1週間~10日くらい歯茎が腫れていた。

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