雪山のファースト・シーズン
先日の記事「3月にオススメの雪山」の続きとして書いていく。
私の場合、雪山のファースト・シーズンは2009年12月~2010年3月、ちょうど10年前の事だった。今でこそ、トコトコとアイゼンとストックで雪山に入っているが、友人にオススメの雪山を訊かれて答えたものの、反芻している内にちょっと軽かったかなと考え直した。先ずは、この辺から書いておこう。
2009.12_ピラタスの坪庭はすぐそこだった
大学時代の先輩に連れられて、10年前の12月に信州をドライブした。で、ピラタス・ロープウェイ(現在の呼称は北八ヶ岳ロープウェイ)から、山頂駅に上がるとそこは雪山そのものだった。子どもの頃に雪が積もる経験をした事がない人にとって、この景色だけで嬉しい。ちょっと歩いてみようという事になって30分くらいだろうか、坪庭を一周した。2人ともスニーカーだったけど歩くのは簡単。ただ、最後の下りがかなり凍っていて、ちょっと足を踏み外せば危ないなって所だった。注意するのはそこだけ。で、分岐を左に曲がり、縞枯山荘によって温かいものを飲んで、薪ストーブでかじかんだ手を暖める。やや薄暗かったのでヘッドライトを点けて読書している登山客もいた。
その日はドライブだったのでそのまま下山したけど、これはイイトコ見つけたな、今度は泊まりに来ようと誓った。
<ピラタス山頂駅から縞枯山荘へ向かう道_2015年>
<ピラタス山麓駅周辺_2015年>
2010.1_縞枯山荘に泊まってみる
で、早くもその翌月に、縞枯山荘に泊まりに行った。夏山は歩いても、冬山の経験はないので、冬の山小屋に泊まる以上の事は何も望める状態ではなかった。ただ、その雰囲気に浸りたいって感じだった。縞枯山荘はピラタス・ロープウェイ山頂駅から徒歩20分くらいなので、特に装備が無くても行けた。その日はジーパンにスニーカーと言う軽装だった。
その晩、30~40人くらいが泊まっていただろうか。大部屋に雑魚寝した。薪ストーブで暖かいけど、まあそこから離れるにつれて寒くなる。山小屋のご主人は優しい方で何も言わなかった(若しくは呆れていただけかも)けど、隣りの布団の人と話していたら、次第に説教に変わっていった。
「ヘッドライト持ってきていないの?」
「はい。忘れました」
「山小屋でヘッテン持参は常識なんだけど……」
私が、ジーパンを履いていたのも、口うるさく咎められた。「もし雨とか雪で濡れた時に乾かないから化繊じゃないと絶対ダメ 。ベルトも革はNG 」。今でこそ当たり前に判る事だけど、その当時はなんせ山の素人。怒られて学ぶ事が多かった。山小屋の宿泊客の靴は当然のこと頑強な冬靴が並んでいた。その中に1つだけポツンと置かれたスニーカーは妙に貧相で目立っていただろう。もし隣りの人に見つかったら、これも手厳しく追及されていたんじゃないか。この方には「カヤックなら仁淀川(高知)が一番綺麗だよ」とかいろいろな情報も教えて頂いたし、本当に感謝。
<<縞枯山荘:大雪の2015年、サッパリした2017年>>
翌朝、静かな縞枯山や雨池山の山間に静謐な空気が流れているのが心地よかった。そこで、テレマークスキーとかスノーシュー(洋風のかんじき)を初めて知った。ただ、この日は雨池峠に降りる登山道をちょっと降りてみたくらいで、斜度が怖かったので直ぐに撤収した。この先に進みたいけど、でもそれは翌年に持ち越す事となった。
2010.2_初めてのスノーシュー・ツアー
スノーシューをやってみたい。でも素人にはできないのでネットでスノーシュー・ツアーを検索した。で、見つけたのが那須岳のスノーシュー・ツアー。冬の装備なんて持っていないので、帽子もウェアもズボンもスノーシューもストックも全てレンタルで始めた。かなり冷え込んだ日で雪も降っていたけど、スノーシューは楽しかった。つぼ足なら雪に深く埋もれてしまうけど、足の面積の3~4倍くらいあるので圧力が分散されてそんなに雪面に食い込む訳でもない。サクサク踏めるし、斜面をスタスタ降りていくのも最初こそ怖かったけど、慣れてしまえば雪が自然と圧縮されていくので思いのほか一歩一歩が深く踏み込める。誰のトレースもない雪面を駆け下りていくのは気分いい。勿論、この日はガイドさんと一緒だったので、素人でも歩ける場所をchoiceしてくれていたんだろう。
で、翌日は東北新幹線で郡山まで上がって、裏磐梯へ。別のツアーに申し込んでスノーシューで歩く。イエローフォールとか五色沼の周辺を7~8名で歩いた。この日は斜面こそなかったけど、案外と簡単にできるものだな、とスノーシューにハマっていた。
<美ヶ原高原にて_2015年>
2010.3_スノーシューを続けてみる
その翌月は北信(飯山周辺)に出掛けた。斑尾高原や黒姫高原のスノーシュー・ツアーに参加して希望湖を歩いてみたり、野沢温泉スキー場の場外に設けられていたスノーシュー・コースを歩いてみたり。北信地方は雪が深く、カーブミラーの丸い部分が丁度雪面の上に出ている場所もあれば、夏道より2m高い所を歩いているケースも。どうして2mと判ったかと言えば、テニスコートのネットの上端が、自分の膝下くらいにずーっと延びていた為。高い木の上に枝を敷き詰めた場所があり、ガイドさんが「あれが熊棚だ」と教えてくれた。ウサギのトレースも教えてもらったし、最初の頃はガイドさんから何かと吸収させてもらった。
北八ツの夏道チェック
夏山は面白いけど、それとは違ってスノーシューも面白いのでまだ続けようと思った。2シーズン目に向けて、唯一やった事は夏道を覚える事。勿論、夏と冬で同じ道を通れるわけではない。でも、全く初めて登るヤマと夏に歩いた経験があるヤマでは理解が違ってくる。後年、石井スポーツでもアイゼンを買う時に散々説教されたけど、その通り。
なので、9月に麦草峠~高見石(泊)~雨池~ピラタス、及びピラタス~北横岳を歩いてみた。それだけ歩いても心の中で消化不良だったので、翌週にもう一度茅野に出掛けていき、ピラタス~雨池峠~双子池(泊)~蓼科山と登った。夏山としての達成感と共に、冬山の準備として登っているってのも不思議な感覚だった。でも、登山者と話していると、確かにそんな人も偶にはいる。
<横岳から硫黄岳へ伸びる稜線にケルンが並ぶ_2016年>
<赤岳に向かう途中で権現岳方面を振り返る_2017年>
※北八ツの夏のショットが手元になかったので、南八ツの写真を貼りました。
その後
帽子、サングラス、ストックスは買ったけど、スノーシューは嵩張るので未だにレンタルで済ませている。アイゼンを買ったのはその4年くらい後だった。それと、スノーシューで事件が起きたのは2013年2月の事だった。(次の項へ続く)