2019年の雪山②(冬の天狗岳)
前半の車山高原の記事はスマホで投稿した。写真重視でポツリポツリ書いた程度の文章だったので、HP掲載に合わせて少し補記した。その翌日の天狗岳&硫黄岳登山はAmeba投稿した文章をそのまま掲載した。
登山時期: 2019年3月中旬
車山高原で前泊
茅野駅に着くと快晴。少し雲あれど八ツも車山もスッキリ見えた。ペンションのマスターが送迎ついでに絶景スポットまでドライブしてくれたのだ。
明日雪山を歩くのでこの日はゆっくり食事。オーナーさんにいろいろと伺いながら、美味しい料理を戴く。茅野市で自然ガイドの仕事とか募集しているんじゃないか、とかありがたいお話も聞いた。自然を相手にする仕事は魅力ある。でも、移住を考えるにはハードルが高い。
<ペンションのdinner(4)>
和風のツマミが嬉しい。四角いのはミートソースのクレープ包み。きのこスープは最高だった。デザートにも満足!
車山山頂から山彦谷へスノーシュー
翌朝は、雲一つ無い快晴でスノーシュー日和だった。9:50リフト山頂駅から歩く。9:55に山頂着。車山乗越へ下る。かつて足がもつれて頭から滑落したので、トラバースしながらゆっくり降りていく。綺麗な曲線を描いた。
<山頂> <山頂から蝶々深山方面へ下る>
下りきった。蝶々深山は初めて。風が吹きすさぶ。ゼブラ山は遠そうなので、山彦谷・北の耳を目指す。11:55着。
※Amebaでは雪山の動画をアップしたが、ここには上手くアップできなかったので残念ながら割愛。いずれ再challenge予定。
<蝶々深山> <山彦谷・北の耳>
動画の最初は八島湿原、最後が蓼科山。珍しく八ヶ岳に雲が掛かっていない。帰りも頼りになるのは自分のトレースのみ。静かな山行。13:55車山高原に下山した。この日、スキー客は多かったけど、蝶々深山より先で会った人はゼロ。かつて鷲ヶ峰ヒュッテに降りて行った事もあるけど中々車山肩から先には出歩かないのかも知れない。なので、行動は慎重に。
<雪原> <スパッツ忘れで靴下と肌が一体化>
ただ、失敗したのはスパッツ忘れ。アイゼンと一緒にコインロッカーへ預けてしまった。已む無くズボンの裾をくつ下で包み込むものの、靴に雪が入ってしまう。体温で溶けた雪が寒風でまた凍ってちょっと痛い。何日か引きずる炎症になるかも。
冬の天狗岳に初登頂
装備: アイゼン、ストック、初ピッケル
ルート: 桜平(10:45発)→夏沢鉱泉(11:10着、12:00発)→箕冠山(14:10)→根石岳(14:50)→東天狗岳(15:35)→根石岳山荘(16:35)
車山高原でスノーシューを愉しんだ翌日は、なんと八ヶ岳で一泊二日の冬山登山教室だった。と言うのも、冬の天狗岳は2回断念している。何年か前に黒百合ヒュッテからtryしたが中山峠で雪がひどくて撤退した。昨年3月には逆に根石岳から天狗岳に登ろうとしたのだが、根石岳から一旦降りる所で道が判らず撤収したためだ。そんな事を夏沢鉱泉の方と話すと、この教室を紹介された。で、一年振りに同じ南側から東天狗を目指す事となった。
桜平まで送迎車に乗り、その途中でシカを目撃。かつて冬の美ヶ原高原に向かう途中で、動けなくなっているシカを見て、小屋の方から「カモシカは雪上を歩けるけどシカの足は細いのでムリ」と聞いていたので大丈夫なものかと心配になった。
<足の細いシカ> <滝の表面に氷の膜> <穏やかなシラビソの森>
桜平(標高1900m)から歩き始めて、箕冠山(標高2579m)へ登っていく。そこまではいつも通りのアイゼン+ストックだった。箕冠山をちょっと北に歩くと森林限界に出て風が強くなる。ただ去年3月も根石岳には単独行できているし軽い気持ちだった。が、ガイド氏はそこまでfreiendlyな対応だったものの、ちょっと言葉尻が厳しくなった。目出し帽は持参してないの? 帽子もフードも両方必要! 今暑くても森林限界に出るので着る! 確かに、雪山は一歩間違えれば生死に関わるので尤もだ。ピッケルを使うのは初めてだったのでレンタルした。この山頂でストックからピッケルに持ち替えた。
で、歩き出したのだが、いきなり躓いてしまう。根石岳が見えてさあこれからと言うTimingでコケたのだ。いつも両手のストックに頼りっきりになっているので、体のバランスが上手く保てないのだ。それで焦ってしまう。しかも、昨年3月より雪が深かった。初めてのピッケルには苦労した。使い方は教えて頂いたものの、なにせストックより短い。滑落しては困るので雪に刺していくのだが、どうしても腰を落とした姿勢になってしまう。で、バランスを崩して足がもつれたり、お尻が痛くなったり。「ふだん大殿筋を使っていないから」ってのが正しいのだろう。
<根石の向こうに西天狗と東天狗>
<ピッケル。刺した後が青く見える時もあり>
冬の根石岳はこれで3回目。初回はスノーシュー、昨年はアイゼン(+ストック)だったが、いつも強風で雪が吹き飛ばされていて土や岩がむき出しになっていた。でも今回は雪に覆われている。しかも雪が降っている。素人には吹雪だったけど、ガイド氏からしたら「風速3~5mでこんなのはそよ風」って感覚。根石山頂も去年は岩がむき出しだったのに、今回はエビのしっぽが岩にこびり付いていた。
※ご参考までに2018.3の根石岳山頂はこんな感じで快晴だった。
<2019.3:根石岳peak、標高2603m> <2018.3:快晴の根石岳peak>
寒い、冷たい。登っている時には自然と体が温まってくるのだが、ちょっと休憩すると途端に手の指先が氷のように冷たくなってくる。まあこれはいつもの事だけど、とにかく、もしまかり間違って遭難でもしたら本当にoutなのだ。
昨年怖くて降りられなかった地点も、今回はガイド氏の案内とトレースを辿ったお陰で難なく通過できた。ただ、その頃には吹雪で東天狗も西天狗も全く見えず、視界から消えてしまった。だから、本当に今この瞬間の一歩一歩を確実に進むしかない。多分一人だったら今年も撤収していたんだろう。
登りは怖さがないので山頂の傍まできた。そこにリッジがあった。積もった雪をガイド氏が崩してくれていたので、そっと通る。そこを渡った所が東天狗岳の山頂なのだ。何も眺望がないけど、確かに夏山で2回ほど登ってきた天狗だった。
下りでは、ガイド氏が雪庇を丁寧に解説してくれる。登りで聞いたらちょっと怖くなったかも知れない。下りだから冷静に写真も撮れる。で、どうにかこの日の小屋・根石岳山荘に到着した。
<天狗岳peak、標高2640m>
<看板にも海老のシッポ> <小屋メシ>
小屋ではガイド氏や小屋番の方(彩雪<氷雪藻>に詳しい)等とゆっくりと酒を呑んで、明日に備えて20:30就寝。
冬の硫黄岳に2年連続で登頂
装備: アイゼン、ストック、初ピッケル
ルート: 根石岳山荘(7:10)→夏沢峠(後で追記)→硫黄岳(後で追記)→夏沢峠→夏沢鉱泉(11:45)
天気: 晴れのち吹雪
朝メシは6:00。昨夜の吹雪は止んで薄日が差していた。昨日登った天狗岳も今日はハッキリと見える。この天気が昼まで持ってくれれば今日の硫黄岳も順調! と思っていた。箕冠山から夏沢峠に向かう途中で、天狗岳を振り返る。昨日は視界不良だったけどでも確かにそこに登ったのだと言い聞かせる。
<根石岳。その奥が天狗岳> <森林限界のすぐ上を登る>
まあ天気ばかりはどうにもmanageできないけど、去年とは様子が全然違う。
【参考】2018年3月の様子は以下ブログを参照。快晴だったし、硫黄岳の山頂も雪が少なかったのが判る。
https://ameblo.jp/cx0293/entry-12434024289.html
夏沢峠に着いた頃にはまた雪が降り始めていた。装備を再確認して森林限界まで淡々と登る。いざ森林限界に出ると昨日と同じ風速5mだった。でも硫黄岳は昨日の天狗岳よりちょっと高い。やはりガイド氏はちゃんと雲行きを見て油断なく判断してくれていた。それと私のフードが外れて不格好なのも、呆れながら直してくれた。これで山頂を目指せる。途中からケルンが続く。7つ数えたら山頂だ。南側の横岳方面から硫黄岳に登る時にはもうちょっと緩やかだったと思うが、この北から登るルートはとにかくいつも強風で辛い。
<微妙なバランスで止まっている巨岩>
<手前が箕冠山、右下の白いareaが夏沢峠>
雪も去年よりかなり深い。常にトレースがある訳じゃない。ガイド氏が左右に振りながら歩きやすいトレースを作ってくれる箇所もあった。ザックが重たいとか、ちょっと右足首が痛いとか、ピッケルを雪面に刺して登ると尻が痛いとか、そんな事は強風が全て忘れさせてくれていた。とにかく登る(さもなくば撤収するか)しかないのだ。遠かった山頂をようやく捉える。あの爆裂火口のすぐ右手だ。
<あと少し> <爆裂火口>
ガイド氏にsoundされてちょっと心が動いたものの、今回の山行ではワカンで雪深いルートを下るのはパスした。荷物を増やしたくなかったのだ。なので後は淡々と夏沢鉱泉に降りていくのみ。相変わらず吹雪が続いており、夏沢峠で会った登山者の中には視界不良で硫黄岳登頂を諦めた人もいた。もう少し下って冷静になると、ようやく足首がちょっと痛いなあとか当たり前の事が意識されてくるものだ。
<硫黄岳peakでガイド氏と。標高2760m> <夏沢鉱泉は木の浴槽>
夏沢鉱泉でホッと一息。ぬるい鉱泉に浸かって、生ビールを煽る。桜平までなら酔って滑ってもまあいいか、と思ってしまう。
ガイド氏のお陰で楽しい冬山登山だった! 冬の未踏破エリアを制覇できたのは嬉しい。それと3月中旬だったので雪質を心配していたが、直前にも降ってくれていたので樹林帯ではフカフカの雪にも恵まれたのだ。写真だけ見ているとモノクロの世界じゃないかと言われそうだが、初ピッケルに戸惑いつつもかなり楽しめた。
初ピッケルの後日談
実は、この初ピッケルには後日談がある。以下、笑い話として読んで下さい。
足首の腱鞘炎になった。両足首の前側が赤く腫れてどうにも痛かったのだ。雪山2日目の途中から気になったものの、下山して温泉に浸かった後で本格的に痛くなってきた。なので、特急あずさで東京に戻ってから、悲しいかなtaxiに乗って家に帰る始末。
とりわけ腫れが顕著だったのが下山翌々日の夜で、部屋に戻って靴下を脱ぐと足首が熱を持ってブヨンと腫れているのが判る。右足の腫れが一回り大きいかも。そんな事で山から下りて10日経ってもヨロヨロしていた。足のスナップを利かせられないので、歩くにもペッタンペッタンと足の裏をそのまま地面に付ける形で歩いている。まるでペンギンか幼児に戻ったみたい。
足の甲を伸ばしたままなら痛みは無いが、曲げる時に痛い。筋肉痛だろうと思ったものの、あまりに痛いので知り合いの整形外科医に診てもらう。予想通りと言うか、レントゲンも撮る必要すら無かったらしく、話して笑って終わりだった。要は使い過ぎって事、腱鞘炎みたいなものだから湿布を貼って安静にしていれば1週間で治るでしょ、って顛末だった。
なので、最初の1週間は殆ど電車に乗っていない。地元の駅前まで行って食糧を調達するくらいで、最低限の行動に絞っていた。ついでに、駅前サウナで膝下だけ冷水に浸していた。熱を持っていたし炎症が静まればと思ったものだ。
と言いながら、先日、階段を上がっていて急に止まろうとしたら右足首に荷重が掛ったのか思いっきり痛くなった。犬とか蛇に咬まれた痛さとでもいうのか、泣きたくなる激痛だった。そんな激痛に下山2週間で3回ほど見舞われた。
少ししてから、馴染みの整骨院でテーピングしてもらう。くるぶしより後ろは不通に、それより前はtightに巻く事で、アキレス腱は動くけど前側の可動域を制限する事で足首を大きく曲がらないようにしてくれた。これでラクになった。でも、「だからって動き回らないように。動き回りそうな人には本当はあんまりtapingしたくないんだけど……」と言われてしまう。あまり動かないように念押しされた訳だ。
それにしてもピッケル恐るべし。初ピッケルでどうにも雪山でバランスが取れなかった。雪も更に積もってきたし、普段からストックに頼っていたので片手のピッケルでは足がもつれるし、いつもとは勝手が違ったのだ。何よりピッケルが短いのでちょっと前屈みになってしまい足首に負担が掛かったのだろう。理由が明確なだけに情けないのだ。
今までだって偶に太ももの筋肉痛はあったけどあれは山登りの充実感の証だったし、足元が覚束ないって代物ではなかったので許容範囲だった。あと、上高地とかflatな所ばかり登山靴で歩いていると、アキレス腱が固定されて伸縮できないのでアキレス腱が凝ったなんて事もあったなあ。 まあ笑いごとで済んでいるうちはいいけど、それなりに体を鍛えて山にいかなくては。