森吉山①(初日はホワイトアウト)

長い切符を買って東北へ

時期: 2020.3.初

新型コロナウイルス感染で物騒な都心の人ごみを避けて、秋田までモンスター(樹氷)を見に出掛けた。有名どころでは蔵王の樹氷を見た事ある。快晴で綺麗だったけど、とにかく寒かった。あと、志賀高原の横手山の樹氷も良かったけど、昨年3月は終わりかけだったので樹氷もちょっと痩せて来ていた。で、今回は東北でスノーシューできるspotとして森吉山を選んだ。実はこの森吉山、日本三大樹氷の1つに数えられているのだと、現地に着いてから知った。

森吉山に行く前に、一の関に寄って餅膳を食べて、盛岡駅前の宿で美味しい夕食を食べておこうと妄想していた。どちらも過去に2度食べている店で手堅い。食べ物と言えば北海道と鶴岡(山形県)だけど、岩手も美味しいモノに当たる確率が高い。以下の写真は2018年秋に紅葉の栗駒山に登る時に食べたもの。これが頭の中に甦ってきた。

先ずは、都内の格安チケット屋でJR東日本の株主優待券を2枚(4300円)調達した。これがあると片道運賃と特急券が1区間だけ4割引きになるのだ。で、JR窓口でこんな切符を買った。

東京―大宮間で4割引して8840円。この区間って直線距離だと500円くらいだけど、盛岡と秋田、新潟を大回りして大宮に戻ってくるルート。正価だと14730円くらいじゃないか。特急券の4割引も含めると、明らかに株主優待券のモトは取れる。これなら、盛岡に寄って、秋田のヤマに登って、羽越線で南下していく途中で温泉(遊佐・湯の田温泉か鶴岡・湯田川温泉か湯野浜温泉あたり)に泊まって、新潟で友人と呑んでこられる。ザックリそんな算段をしていた。乗車券はあと大宮から東京間が足らないけど、これは同じルートを2度通る切符を作成出来ない為。後で買い足せば大丈夫だし、それで新潟新幹線にも乗れる。

<長い切符、樹氷鑑賞チケット>

さて、11時くらいになりみどりの窓口で新幹線の時刻表を調べ始めたのだが、どうやらこの時間に出発しても一の関のランチタイムに餅膳を食べるには間に合わなさそう。それに、盛岡で一泊しても翌朝に秋田のローカル線へ乗り継ぐのに結構手間取りそうだ。急遽、岩手のご馳走は諦めて、directに角館まで直行する事にした。この夏に早池峰山に登りたいし、岩手のご馳走はそこまでお預けにした。

3月初めだからか、盛岡まで雪は見られなかった。秋田新幹線が盛岡で大きく左折して田沢湖線に入ると、急に周囲に雪が目立ってくる。

角館で下車すると冷たい雨が降っている。ここは武家屋敷以外にも川沿いに桜並木がずっと続いていて春は綺麗な街だ。ただ今回は雨降りで仕方なく、宿に向かうとほどなく雪に変わり、目まぐるしい天気だった。この日の夕食はイマイチだったので写真は省略。

森吉山でホワイトアウト

天気: 吹雪

装具: ストック、スノーシュー

翌朝は秋田内陸縦貫鉄道に乗って阿仁合駅へ。そこから乗合タクシーで森吉山ゴンドラ駅に向かう。そこまで1枚のオトクなチケットを買ったので、ラク。しかも、乗合タクシー往復2000円、ゴンドラ往復1800円+電車代なので5000円はオトク。

スノーシューをレンタルして、登山届を出すために、どこまで行けそうかレンタルショップの兄ちゃんに訊いてみる。が、ハッキリしない。山頂は無理、風速13mだから途中の石森(地図によると徒歩30分くらい)も無理だろうと言う。まさか、と思いつつ登山届を渡すと「2番」と書かれた札を渡される。要は、この日登山届を書いてノコノコ上に上がるような人は2組目だったって事。

ゴンドラから見た景色は綺麗。植生もいつもの長野県のヤマとは違う。ただ、向かってくるゴンドラが軒並み斜めに傾いているのを見て焦った。風速13mってこの事か! こっちは乗っているからあまり揺れているのが判らないけど、空のゴンドラは風に任せて泳いでいる……

<ゴンドラからの景色(2)>

事態の悲惨さが判ったのは山頂駅に着いてすぐだった。もう真っ白。ホワイトアウトしている。折角ここまで乗り継いで来たのでスノーシューを装着して歩き始めるけど、視界が殆ど無い。1m先は虚ろに見えるけど、2m先は全く判らない。シロの世界だ。樹氷がある。モンスターと思しき木もある。けど、全てが霞んで見える。

<ホワイトアウト(3)>

でも、山頂駅から20分くらいで樹氷平があると言うのに、肝心の入口・方向すらハッキリと判らない。そもそもそこを越えないと、森吉山はおろかその手前の石森にも行けない。進もうにも猛吹雪だし、視界ゼロだし思うに任せない状況だった。サクサク、フカフカの雪だけど、少し歩いてみると乾いた風でザラザラに凍ったような雪面もあったので、下手に進めない。ゴンドラ山頂駅の建物さえどこんいあるのか見失いそうだった。で、この日は30分ほど悪戦苦闘して断念した。撤収だ。

スノーシューを返却にいくと、「そりゃそうでしょ。云った通り」と笑いながらしたり顔で出迎えられた。うーん、このまま東京に帰るのか……。

マタギと「釣りキチ三平」

さて、有名な打当温泉・マタギの湯に一泊した。温泉は鉄分が多く茶褐色をしていた。最寄りの阿仁マタギ駅は本当に何もない無人駅だった。

<阿仁マタギ駅周辺(2)>

この旅館のすぐ外にマタギ小屋が展示されていた。神棚も備え付けられていた。薪ストーブもあったけど、秋~初冬にかけて山籠もりするにはいかにも寒いだろう。

<マタギ小屋(2)、ウサギを獲るのに投げる罠>

この旅館の敷地内にマタギ資料館がある。もしマタギに興味のある方は、スマホで音声案内が流れるので判り易い。この写真はウサギを獲るのに使っていた道具。ウサギがこの輪の中に嵌まってしまうと自力では脱出できないとか。かなり昔から使われていた道具だと言う。

<釣りキチ三平のイラスト(2)、打当温泉>

矢口高雄のマンガを読んだ事はないが、タイトルくらいは知っている。矢口氏はこの近在の出身らしい。宿の部屋には彼のイラストが飾られていたし、駅にも彼がデザインしたマタギのマスコットキャラクターの立て看板があった。

秋田を食べる

秋田と言えば、珍しいものがいろいろと食べられる。かつて秋田に泊まった時には稲庭うどん、きりたんぽ、だまこ餅、じゅんさい、ギバサ(関東ではアカモクと言うみたい)、横手焼きそば等いろいろと食べた事はある。特に何年か前、真冬の小安峡温泉に泊まった時は山菜も豊富だった。

でも今回は角館や阿仁に3泊して、これらの秋田名物には全くお目に掛かれなかったのが、ちょっと不思議。尚、ギバサは大戸屋の定食でねばねば丼を注文すれば、納豆やオクラと一緒にギバサも付いてくるのでお手軽に食べる事ができる。

マタギの里と言われる阿仁地方に2泊したけど、特に注文していなかったので熊肉も食べていない。代わりに珍しかったモノをいくつか紹介する。

先ず最初はお菓子。北秋田名物「バター餅」が美味しかった。初めて見たけど、純粋な餅ではなく餅菓子だった。賞味期限が7日くらいあった。ほんのりバターの香りが口の中に広がり幸せな気分になれる。夕食のデザートとして、三角形のバター餅が付いてきたのもあった。

<バター餅、エゴと赤魚>

次は朝食メニューから2品ほど。エゴは、新潟市内だとエゴネリって名前で寿司屋のツマミで出てきた事がある。いご草を煮て寒天で固めたものだとか。特に味が付いているものではないけど、まあ東京ではお目に掛かった事はない。それが、秋田の朝食に付いてきた。写真手前にある黒っぽい立方体2つがエゴだ。

それと、日本の朝食の焼き魚って7~8割はシャケじゃないか。残り2割くらいが焼サバで、伊豆半島に泊まるとアジの開きとかサンマのみりん干しとか美味しい干物にありつける日もある。でも、今回は秋田で3泊したけど、3日とも赤魚を食べられた。これはありがたい。

マタギと言えば有名な打当温泉・マタギの湯に泊まった晩、甘い味噌がタップリと乗っかった米ナス田楽が絶品だった。で、珍しいのが白身の刺身。とりたてて気になる食感でもなかったがなんとナマズの刺身。これは初物。名前を聞くと少しひいてしまうけど、あっさりした白身だった。

<白身の刺身はなんとナマズ>

他に、イワシのツミレ鍋も食べたけど、これはハンペンっぽくて味も今ひとつNGだったので写真は省略。しょっつる鍋は味が濃くて好きだけど、絵としては平凡なのでパス。秋田のお新香・いぶりがっこはあまりにもpopularなので省略する。

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