晩夏の立山②(久々に雄山へ)
行程: みくりが池温泉(8:15)→雷鳥沢ヒュッテ(8:45)→一の越(11:00)→雄山(12:25)→一の越(13:45)→雷鳥沢ヒュッテ(15:40)
一の越まで
登山道を歩くのは好きだけど、立山の観光客向けにコンクリートで固めたトレイルは好きじゃない。階段になっているし、これがとかく歩きにくいのだ。ショボイ万里の長城とでも言うのか、それが30~40分も続くとイヤになる。
血の池や地獄谷を左右に見ながら雷鳥沢まで辿り着く。ここに小屋が2軒とキャンプ場がある。この日はこちらに泊まるので荷物を預けてから、雄山に登りたいのだ。
<立山版_万里の長城、血の池、みくりが池>
快晴だ。それにしても8月下旬だと雪渓はない。かつて来たのは7月末くらいだったので室堂から見上げた山肌には幾重にも白く輝く雪渓が残っていて、木々の緑色とのcontrastが綺麗だった。僅か1ケ月の違いでこうも違うものか。
<雄山や大汝山、別山方面、一の越>
万里の長城は室堂を基点にして2方向に続いている。左手は雷鳥沢まで、そして右手は一の越のちょっと手前までコンクリートで固められているのだ。土を踏みしめて歩くのはそれなりにsoftな感触が足裏に伝わるのか、さして辛いと思わない。でも、アスファルトとコンクリート道は苦手だ。異様に足の運びが悪いのは自分でも意識できるから重症だ。いつまで続くのか、考えるだけでも気力が失せてくる。
ようやく標高2700mの一の越まで上がってきた。ここで、マスクを付けて山小屋に入る。水分と糖分を補給してから雄山を目指すのだ。一の越から上はガレ場で斜度もキツクなるけど、普通の登山道なので、ここでようやくテンションが上がってくる。かつて8年前には歩きにくいのとあまりにも上りも下りもお互いに道を譲り合って往来していたけど、今回は道が整備されていて2ルートに綺麗に分けてくれていた。これだとそこそこ混み合っていてもお互いに歩きやすい。
雄山登頂、そして神の道
ようやく山頂へ辿り着いた。久々に標高3000m峰に登ってきたのだ。下界(標高2400m)は晴れていたのに、一の越辺りからだんだんとガスで視界が悪くなってきた。微かに晴れた所から、眼下に黒部湖が見えた。槍ヶ岳とか剣山とか見える筈だけど、残念ながらそれらは拝めず。
コロナ禍で社務所は閉まっているし、2020年はお祓いもしてくれない。ちょうど元気なお婆さんが登頂してきて「祝○○○○さん傘寿登山」と書かれた横断幕を掲げて、記念撮影を始める。聞けば「本当はこれを書いてくれたみんなと一緒に来るつもりだったけどコロナで単独行になった。でもこの写真で登頂報告するの」と嬉しそうだった。山頂のお堂の傍にも願掛けした石ころに「コロナ」の文字が目立った。
山頂部でカメラを構えた人が群れている。おっと雷鳥が3羽もいた。草も殆ど生えていない岩場で彼らは何を食べて生きているのか。
<雄山にて(3)、山頂の雷鳥>
かつて8年前にはここから大汝山、富士の折立、真砂岳、別山と縦走していった。でも、今回はそんな体力はなく、中間地点から雷鳥沢に降りる大走りも道があんまり整備されていないと聞いたので、元来た道を戻る。
ただ、コンクリート道は嫌いなので、神の道へ分岐して緩く雷鳥沢へトラバースしていく。一の越から少し下に分岐があるが、人通りはかなり少ないし、この道はお気に入り。このルートはコンクリートに固められていないし、緩やかな登山道なので好きだ。一面にタデが咲き誇っていたほか、枯れかかって黄色くなったコバイケイソウの葉も目立った。雷鳥沢に近くなると、イワカガミの艶っぽい葉やチングルマの穂が相当あり、6~7月頃だともっと華やかな花畑なんだろうと想像できる。
露天風呂があるのはありがたい。夕食で上段まん中に入っていたは富山名産「さす」で、カジキマグロの昆布〆とか。
コロナ対策で大部屋は使用不可のため、個室だったけどちょっと湿っているし「雨漏りをご了承下さい」と書かれても15000円ではやっぱり怒れてくるなあ~。あと食堂のバルコニーの壁が鉄筋剥きだしになっていたのもビックリ。かなり老朽化しているなあ。
<神の道を下る(3)>
室堂~雄山の花々
雄山に登った日の花をエリア毎に分けて紹介していく。
(A)室堂から一の越へ
一の越までは一般の観光客も混じっている。可憐な花も多い。
(B)一の越から雄山山頂へ
ここは標高の高いガレ場なので殆ど花は咲いていない。こちらは登山者onlyだ。
(C)神の道にて
チングルマの穂とイワカガミの丸っこい葉も多かったので、7月頃に来れば全然違う景色が見られるのだろう。ここは観光客は入って来ないし、登山者も少ないのでオススメ。
<ピンクの穂、アザミとタデ、イワツメグサ、ヨツバシオガマ、キキョウ、トウヤクリンドウ、黄色い花(キンポウゲかな)、モミジカラマツ、ミヤマリンドウ、イワイチョウ>
最終日(軽く弘法を歩いて扇沢ルートへ下山)
最終日も快晴だった。小屋からは室堂乗越から奥大日岳へ続く緩い稜線が綺麗だった。あの稜線を歩きたかったけど、下まで下るのもピストンで往復してくるのも気力が残っていなかった。立山は遠いので何年先か判らないけど、まあ次回に持ち越しだ。
<奥大日岳へ続く稜線、弘法バス停>
その代わり、バスで室堂から弥陀ヶ原の少し先まで行き弘法のバス停で下車した。
弘法バス停の近くにも花あり。バスで案内放送が喋っていたように、遠くに薬師岳がどっしりと聳えていた。これまでヤマと言えば長野、山梨、山形がメインだったけど、確かに富山県も開拓してみたいな。TVで見た下の廊下とか祖母谷温泉とか、アクセスは悪いけど秘境が沢山ありそうだ。
弘法バス停から登山道が上下にずっと通じていて、ここから15~20分ほど弥陀ヶ原方面に歩いていく。ただ、笹が茂っており視界が悪いし登山者も全くいないので、ふと不安になる。
こんな場所で熊と遭遇したらひとたまりも無いな。で、そそくさと撤収を決めた。戻り始めたら遠くから熊よけ鈴の音が聞こえてきた。その方は称名滝の方から黙々と上がってきて室堂まで登るとか。
室堂のホワイトボードで熊情報を見つけた。今更だけど、えんま台(みくりが池付近)とか室堂乗越(雷鳥沢~奥大日岳の途中)でクマの目撃情報があるらしい。ちょっと焦る。コロナ禍で登山者が例年より少ないためか、熊もどこでも自由に歩き回れるのだろう。
<大観峰から黒部ダムを見下ろす、真下にロープウェイの影>
信濃大町に至るルートは、何度も結構乗換えがあって落ち着かない。扇沢まで下ると暑くなってくる。JR信濃大町駅まで降りてくると、真夏の暑さはもう容赦なかった。ああ、こんな事なら室堂でもう1泊くらいゆっくりしてくれば良かった。でも今更登り返す訳にもいかず、仁科三湖でのんびりカヤックできる所を探してもいいけどもうすぐ夕方で時間的に中途半端だった。
JR周遊きっぷの期限はまだ何日か残っていたけど、これで東京に戻っていくしかないな。