【番外編】東京五輪2020で7人制ラグビー観戦

コロナ禍で感染者が広がっていく中、東京五輪が開催された。そんな盛り上がりの中で、7人制ラグビーだけ見ていた。日本チームはリオ五輪の結果から大きく後退して最終的に11位に終わったけど、7人制ラグビーのspeedyな試合展開は実に面白かった。

それと、オリンピックでの対戦国は全て(アイルランドは前哨戦)は旅行先として訪問した国々だったので、それぞれの試合でどちらも応援したい国ばかりだった。特に15人制ラグビーではフィジカルで劣るフィジー選手もspeedyな7人制だとフィールドで活き活き動いていた。

五輪の前哨戦:アイルランドと

今年7/3、久々にラグビー日本代表の試合を見た。敵地ダブリンで2019W杯に歴史的な勝利をゲットしたアイルランドとの再戦だった。

NHK「ひきこもり先生」も捨てがたかったのでドラマが終わった後、前半ハイライトシーンから見始めた。前半は17-19で接戦を演じていた。選手はPR稲垣、SO田村優、リーチマイケル、FB松島幸太郎などいつもの日本代表選手が揃っていた。

後半の前半も、双方のチームがトライをゲットして接戦を続ける。ビックリしたのはSHのメンツが違う。いつも小柄な田中か流だった。そこに斉藤直人が入っていたのだ。これはSH斉藤、SO岸川のコンビで早大の優勝に貢献したけど、そこまでのskillがあるのか判らなかった。早稲田のSHと言えば1990年頃の堀越正巳がズ抜けていたし、それ以降にimpactある選手は記憶になかった。になので、彼が卒業した頃にサンウルブスに加入するって事に驚いた。で、そのSH斉藤が後半17分に中央へ飛び込んでトライ!

最後10分くらいは日本代表もアイルランドの堅い守りに阻まれて攻めあぐねていたし、見ているこっちとしても2019年W杯ほどに勝って欲しいって熱い想いも湧いてこなかった。なので、31-39で負けたのも淡々と受け止めてしまった。見ているこっちに熱量が不足していたな。

<IrelandーJapan、Fiji-Japan>

オリンピックの7人制ラグビー

7人制ラグビーもグラウンドの大きさは15人制と同じ。出場人数が絞り込まれているので画面から受ける迫力はdownしてしまうけど、タックルで攻撃が止まる場面が減るので一旦ボールを獲得すると一気に走り込んでトライに繋げるチャンスは増えてくる。なので、ジリジリとした攻防が続く15人制ラグビーよりも判りやすいかも知れない。フィジーは15人制ラグビーだと体格差で南半球の他国より劣るんだろうけど、7人制のスピーディな展開に合っている。確か第一回W杯(15人制)でベスト8に進んでいるし、前回のオリンピックでもフィジーが7人制で金メダルを獲得しており、日本は4位だったとか。 15人制は前後半それぞれ40分制だけど、オリンピックの7人制は前後半7分制で計14分。なので、途中から差を詰めていくとか大逆転するケースは稀なんじゃないか。とにかく先行逃げ切りが優位だろう。

Bグループ:日本vsフィジー戦

出場した日本選手の中で知っているのは藤田慶和のみ。早稲田大の頃にFBで日本代表に選ばれていたけど、確か2014年頃に怪我で膝の前十字靭帯を断裂していた。そうか彼は今Panasonicに在籍していたのか。 この試合はフィジーが先制トライを挙げて、前半は日本が14-12で逆転して折り返したのの、最終的に24-19でフィジーの勝ちだった。日本代表にフィジー出身者も含まれていたが、総じて健闘していた。

Bグループ:日本vsイギリス戦

普段はラグビー発祥国に敬意を表してイングランド、ウェールズ、スコットランドなど個別に参戦しているので、ラグビーにおいてイギリスって国名を聞くのは違和感がある。

そのイギリスが開始0分にノーホイッスルトライを挙げる。イギリス選手のステップワークが鮮やかだった。ノールック・パスも上手く決まっていく。2019ワールドカップ・ラグビーでオフロード・パスって言葉が注目されたけど、どちらもチームメイトと信頼関係ができていないとパスは成立しない。

対する日本選手はこの日の2試合目で疲れが溜まっていたのか動きが悪い。パスを回していても、受ける側が突っ立ったまま受けているのでなかなかゲインラインに達する事ができない。ボヤボヤしているうちにボールを奪われてしまう。前半7分にイギリスが独走してゴールラインに迫った時、日本サイドは誰も追っていない。フィジー戦と異なりいい所なし。そんな事で試合は0-34で惨敗だった。

<UK-Japan、Canada-Japan>

Bグループ:日本vsカナダ戦

日本の第3戦が行われた。前日にフィジーとイギリスに2連敗した後だったし、特にイギリス戦ではいい所なしだったので1視聴者としてTVの前で待っている者としてテンションは低かった。

カナダが前半だけで3トライを挙げて19-0で折り返し、早くも配色濃厚となった。日本もフィジカルに勝る南太平洋出身の選手を何人か加えているものの、なす術がない状態だった。しかも、前半5分にゴール前のハイタックルでシン・ビンで1人退場を余儀なくされてしまう。たかが2分の退場と言えども、7人制ラグビーは前後半各7分なので2分を6人で守る事になり、その不利・damageは想像以上に大きい。 アナウンサーが時間差攻撃って言葉を使っていた。敵のプレッシャーが強いとどうしても前進できずにひるんでしまうので、それがホントの技なのか躊躇して固まってしまうのか微妙だった。華麗なステップワークだと見ていて美しいと感じるけど。後半6分に日本のキャプテン松井が独走トライで一矢報いる。36-12で3戦3敗、予選リーグ最下位。フィジーやイギリスと同組だったのが不運だったのか、試練としていい機会だったと思いたい。

Bグループ:フィジーvsイギリス戦

試合としては断然こっちの方が面白かった。この組み合わせ、前回2016年リオ五輪の決勝カードの再現となったもの。

アナウンサーが「フィジーは相手チームに合わせて戦う」と言っていたが、確かに前日の日本戦より全然強い。本気モードでやっているって事だろう。前半19-0だったのであらかた勝負は付いた。最終的に33-7。

後半2分、フィジーがゴール前で相手にボールを奪われた。でもアナウンサー(or解説者)が「フィジーは相手にボールを持たせた上で失敗させてそこを衝く」と喋った時だった。確かにイギリス選手がボールを落とす。誰もいないスペースですかさずフィジー選手がボールを拾って、そのままボールを運んでトライ! グラウンド中央からフィジー選手が攻めている場面でも、フィジー選手がボールを軽く上に投げ上げているシーンが2つ続いた。当然スローフォワードにならないように後ろに投げている筈。これが上手く味方の手に渡っていくのが見事だった。こんなブラインド・パスってインターセプトされそうで怖いけど、それを果敢にやってのける。これがフィジアン・マジックなのか!

<Fiji対UK、Korea対Japan>

11~12位決定戦:日本vs韓国

11位争いと言いつつも正直なところビリとブービー賞を競うのは酷だ。まあ、この対戦は実力差がありそうで安心して見られた。キャプテン松井もオリンピック5試合で計4トライをゲットした。

シンビンの2分間退場が計3人も出てしまうなど、荒っぽい試合だった。また、ゴールラインを越えた後で前半残り時間を気にしながらいつまでもタッチダウンしない態度は良くない。7人制ラグビーがハードなので体力消耗するのは判るけど、勝っている場面でも真摯にプレイして欲しかった。

珍しい判定もあった。ボールを前に落とすノッコンは反則だけど、韓国選手が意図的なノッコンを取られていた。相手ボールをインターセプトしたのでもなく、相手のパスを妨害したって解釈されていたが、ラグビー・ルールは難しい。

ホント勝てて良かった。体格差のあるラグビーは決して順位だけじゃないので、次にまたいい試合をしてくれればそれで構わない。ただ、日本全体としてラグビーに対する熱量は2015-W杯や2019-W杯よりスコンと落ちたかも知れない。2015年大会で「南アフリカに勝った!」ってニュースは5軍が1軍に勝ったくらいの驚き、物凄い衝撃だったなあ。今大会は注目選手がハッキリしていなかったのも大きく、日本ラグビーが市民権を獲得するまで道は長そうだ。

決勝戦:フィジーvsニュージーランド

個人的にはNZもフィジーも旅行で訪れた事があるので、決勝戦はどっちが勝っても嬉しい2チーム。NZ(以下ニュージーランドと表記)は2019ワールドカップでも充分楽しませてくれたけど、フィジーは試合前の国歌斉唱でみんな泣いている。メンタル面で一歩リードしている印象だった。

試合が始まると、ラグビーボールは何故かフィジー選手に吸い付いていくように見えた。フィジー選手が手で前に弾いたように見えたのだがそれならノッコンだ。きっとNZ選手が触れたボールをフィジー選手が拾っただけなんだろう。NZ選手のタックルを蹴散らして前に突き進んでいく果敢な姿が光った。突き飛ばして走り続けたフィジー選手も、あまりの衝撃でバランスを崩して10mほど先で倒れ込んだ。また、後半の終盤で「ザ・タンク」と紹介されていた5番トワイブカ選手が走り切ってトライするシーンなど気迫に勝った形だ。誰か判らないけど、フィジー選手の兄でラグビーの試合で亡くなった方がいるとか、そうした思いを受け継いでいる事でパワーは増すだろう。

NZも負けていなかった。自陣ゴール前からヨコ展開しながらパスを繋げて、走り切ってトライを返す。思いっきり膝を上げてステップする事でフィジー選手のタックルを外して前進する雄姿も魅せてくれた。

試合は27-12でフィジーが2大会連続で金メダルをゲット! 試合終了後、フィジー選手はみんな片膝をグラウンドに点いて泣き崩れていた。ラグビーが国技だと言うし、もの凄いプレッシャーだったのだろう。

<決勝戦:Fiji-NZ(2)>

ここ3日間の総括

12チームが3グループで予選を戦い、上位8チームが決勝に進む。7/26,27の2日連続で計4試合をこなすのはとにかくtoughなスケジュールだった。

それにしても、7人制だと相手をかわす、抜く、走り切るスキルが15人制ラグビーよりも要求される。15人の細分化された専門職よりも、フィジカルに優れる均質に近いメンバが7名揃った方が強そうだ。ポジションで言うとSHの役割とか低そうでオールマイティーに動けるFL、CTB、WTBが必要とされているのかも。

逆に、キックで陣地を稼ぐとかPGを狙う場面は殆どないし、インサイドワークが分かりにくいスクラム戦も淡泊だな。ラグビーって地力の差が露骨に出てしまうので、ワンサイド・ゲームになりやすい傾向は15人制でも7人制でも変わらない。

ただ、試合時間が短いので勢いに呑まれると、あっという間に終わってしまうのが敗者にとって厳しい。それでも15人制前後半40分と同じような得点で終わる所がまた面白いな。 試合開始に合わせてロボットカーが楕円球のボールを運んできて、ポトンと置いてくれる場面もこれで見納めだ。

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