双六岳・三俣蓮華岳へ、花見平でクマに遭遇!
目次
(0)北アルプスの裏銀座に初めて分け入った
(1)クマと遭遇した時の状況整理
(2)裏銀座にクマは出没するのか
(3)北アルプス3県のクマ目撃情報
Appendix A:北海道のヒグマ情報
Appendix B:双六小屋でTJARのランナーとすれ違った
Appendix C:柏原新道で子熊と遭遇(2024.8追記)
(0)北アルプスの裏銀座に初めて分け入った
北アルプス・双六岳はガスに覆われて視界不良。その1.5時間ほど後、三俣蓮華岳では快晴。雲の平も薬師岳も鷲羽岳もスッキリ拝めた。もう少し粘っていればここで槍の穂先が見えたかも。
<三俣蓮華岳山頂、鷲羽岳を望む>
この山頂に至るまで、高山植物はこれでもかと言わんばかりに咲き誇っていた。確かに双六岳が花の百名山の名に違わぬ明峰なのだと分かった。新穂高~わさび平でアジサイとジャコウソウ、鏡平までではミソガワソウやモミジカラマツが目立った。センジュガンピが6~7輪も咲いていたのも、他エリアでは記憶にないものだった。双六小屋の前後でもハクサンイチゲ、ハクサンフウロ、シオガマ、コバイケイソウ、ウサギギクなど花畑が続いていた。
<この日の高山植物のごく一部。左上から順にウサギギク、ニュウ、イタドリ、ヨツバシオガマ、クルマユリ、トモエシオガマ、ミヤマホツツジ、キヌガサソウ、シナノオトギリ、ミソガワソウ、センジュガンピ、ジャコウソウ>
余談ながら、この写真をベースに「花びらの枚数はフィボナッチ数列になっていない」事を書いたAmebaブログの記事を作成している。織田裕二が出演しているNHK-BS「ヒューマニエンス」で何だかおかしな説がまことしやかに語られていたためだ。以下リンクを参照。
https://ameblo.jp/cx0293/entry-12777253662.html
さて、それはそれとして、本日の本題はここから。登山途中に子グマと遭遇したのだ。気持ちの整理と情報共有を兼ねて書いておきたい。
(1)クマと遭遇した時の状況整理
日時: 8月7日 8:15頃
場所: 鏡平山荘から双六小屋に上がる途中。花見平(標高2600m)から少し先の稜線。
登って行くと、登山者2人が前方の黒い物体を凝視していた。10~15m先だ。その黒いモノの5mくらい向こうに単独行の男性が一人、やはり立ち止まっていた。「もしかして熊ですか?」分かり切った質問をしてしまった。
最初の写真は焦って撮ったので、残念ながらボケてしまった。子熊は登山道のど真ん中に座り込んでいた。こちらは熊の背中を見ているだけで、熊としてはこっちを全く意識していない。手前の男性が熊を驚かすように大声を張り上げてみたがウンともスンとも反応しない。3分くらいだろうか、4人とも立ちすくす。
<黒い物体(8:16撮影)、子熊が登山道から斜面に降りた後で(8:18撮影)>
しばらくして子熊は斜面を少し下りていく。食事中のようだった。「まだ距離が近いからもう少し様子を見ましょう」。私もその言葉に従った。ほどなくして、編み笠の下山者がそろりと動き出してこちらにやってくる。彼のデジカメにはクマがしっかり写っていた。「首の辺りにツキノワが見えた」。彼はツキノワグマと視線が合っていたのだ。恐怖はこっちの数倍上だったろう。
花見平の位置は以下の地図を参照。8月初旬でもまだまだ高山植物と雪渓が同居しているエリアだった。もっと標高の低い場所に棲息していると思い込んでいたので、標高2600m超で出没してきたのはなんとも想定外だった。
<双六小屋HPより> ※出典は後述
https://www.sugorokugoya.com/sugoroku/chizu/sugoroku_chizu.html
こちらも警戒しながらようやくその危険地帯を足速に通り過ぎた。子熊が戻って来るのも怖いけど、何より近くに母熊が隠れていたらマズイ。いつも熊よけ鈴をストックに括り付けている。クマを目撃してから双六小屋に着くまで、ワザと指を動かして余計に鈴を鳴らせてずっと警戒していた。
この登山道を越えていかないと、三俣蓮華岳の眺望には巡り会えなかったのだ。
(2)裏銀座にクマは出没するのか
2009年から登山を始めてこのかた、登山道でクマに出会ったのは初めての事だった。カモシカは雪山(八ヶ岳山麓と飯山)で3回、静岡県(掛川)で1回出会っている。シカも偶に目にするけど、幸いにして本州のクマには縁がなかった。
それと、北アルプスでも表銀座(燕~蝶ケ岳)や涸沢、独標、爺、唐松、白馬、立山を歩いても、アクセスが大変な裏銀座エリアに入るのは今回が初めてだった。もしかして裏銀座ってこういうエリアなの?
確かにコロナ禍が始まった2020年には登山者が減ったためか、小梨平(上高地)や立山でクマ目撃が増えたと聞いた。今回の登山道でも、わさび平や鏡平に出没しているとの情報が掲示されていた。私が歩いたシシウドが原にも前日目撃されていた。けど、どうも他人事のようにしか思えなかったのだ。
<クマ注意喚起の看板(2)>
山小屋で目撃情報を伝えても「情報提供ありがとうございました」と至って淡泊だった。新穂高でも「秩父沢(わざび平と鏡平の間)でも目撃されている。無事で良かった」と返ってきたくらいで、ヤマ関係者にはクマって当たり前の存在だったのだろうか。それが意外でもあり、自分の認識が甘かったのかも知れない。ネット検索すると10月に双六小屋から三俣峠の間とか、11月初旬に小池新道入口とかで遭遇している記録がポロポロ出てくる。それは正に今回の山行で歩いたエリアなのだ。
今回クマに遭遇した話をすると、他の登山者などからいくつか経験談を教えて頂いた。尚、明らかにオフレコと思われる内容はカットしている。
Aさん「自分達が住んでいる所に親子の熊3頭が出没した。あまりの怖さで自分でも考えられない大声を張り上げたらクマが驚いて逃げて行った」
Bさん「動物愛護団体がウルサイので、熊が向かって来ない限りこちらから撃てない」
Cさん「自分の居住エリアでよく見かけるのは冬眠明けの春。自分達が住んでいる所ではフツウに熊がいるし、爆竹でクマを驚かせておいてから入山する。それでも五色ケ原辺りではよく出会うヨ。クマ棚があればいるヨ」
確かに雪山で上を見ればクマ棚だと分かるけど、夏山では目立たないので全く意識した事はないなあ……。
(3)北アルプス3県のクマ目撃情報
長野県、岐阜県、富山県の過去5年の情報をネット検索してみた。これが集落での目撃情報なのか登山者に関わるものかハッキリ読み込んでいないが、県によって目撃されるピーク月が全く異なるのに驚いた。これでは傾向と対策もマチマチって事だ。
※参考(同様に長野県なども検索できる)
https://www.teguchi.info/kuma-2/gifu/
Appendix A:北海道のヒグマ情報
以前に書いたヒグマに関する文章があるので、こちらもご参考まで。
【2015年】知床で2日連続ヒグマに遭遇
======
夏には知床の海でカヤックしている。再訪したのは2015年7月。ウトロからガイドさんの車で少し走って入水した。おおよそその付近の海域を漕いでおり、写真にも海に流れ落ちる滝が写っている。ガイドさん1名と観光客が7~10名くらいだったと記憶している。
パドリングしていると、ガイドさんが海岸沿いに子グマがいると教えてくれる。黒い影が小さく見えた程度でそれがクマなのか識別できなかった。こっちは水面にいていくら距離があると言っても、ピッと緊張が走る。
しかも、その翌日、知床自然センターからフレペの滝へ向かう遊歩道を歩いていると、観光客のおばちゃん達が騒々しい。どうしたのか聞いてみるとヒグマが目撃されたとか。私も遊歩道の50mくらい先に黒い物体が動くのを確認した。
======
※弊Amebaブログ原文:
https://ameblo.jp/cx0293/entry-12739595113.html
【2019年】北海道・阿寒湖で伺った話
======
クマと目を合わせたまま後ずさりするってのは良く聞く。とにかく背中を見せて逃げてはダメだと言う。流石にそれは知っている。
この日初めて聞いたのは、杖の使い方。杖でもストックでも良いけど、襲ってきたクマの顔をめがけて突くといいって言うけど、そんな事本当にできるのか疑わしい。杖の先を自分の踵でシッカリ押さえたまま、もう片方を上に向けて手で握っておく。で、襲い掛かってきたクマの喉元にクマの勢いのまま突き刺すのが先人の知恵だと言う。確かに、冷静に考えると突き刺すよりは突き立てて相手の力を上手く利用する方が勝てる確率は高そうだ。
本州ではツキノワグマより北海道のヒグマの方が怖いと聞く。でも、「逆だよ。本州のクマの方が性格が悪い」とか。この真偽はなんとも判らない。クマがザックに興味を持ったらもうその荷物は命と引き換えに置いていくしかないとか、松の木に登ればクマの体重だと支えきれないので追って来られないとか、これらはそうだと思うけど実は木登りできないなあ……。
それと、この4日間にいろいろな人の話を伺ったので誰に訊いたか判然としないが、熊よけの鈴の効果は疑わしいので、自分で曲がり角で手を叩くとか大声を出すとか自衛した方が遭遇する確率を抑えられるとか。
======
※原文
*
かつて明治温泉(長野県茅野市)の近くでカモシカとご対面した時は、ホントの至近距離(2mくらい)だった。でも、今回は幸いにして4人目としてクマの現場に遭遇した。なので、直接クマと対峙したとまでは言い切れない。はて、自分が1人でクマと遭遇していたら、気が動転しないで対応できたのだろうか。まだまだ命は欲しいので、冷静に対処したい。そうしなくては。
Appendix B:双六小屋でTJARのランナーとすれ違った
先日(2022年末)、ボケーッとNHKでTJAR-2022を見ていた。富山湾から3大アルプスをmax8日間で走り抜いて駿河湾まで日本縦断する過酷なレースだ。これまでもこんな苦労してまでヤマを走っているものだと、半ば感心して見ていた。寝る時間を削ってまで、夜中に稜線を走るなんて何が楽しいんだろう、ってのが軟弱登山者の正直な感想。
※参考 https://www.tjar.jp/
そう言えば、私が花見平の辺りでクマに遭遇して、双六岳と三俣蓮華岳に登頂した翌朝、双六小屋の前ですれ違った人って、あの有名な望月選手だったんじゃないか。そう、過去4回優勝してしかも、2018年には重たいザックを背負って無補給で走った望月将悟(静岡市消防局)だ。
そんな事をこの年末になって思い出した。前日の夕暮れ時にビールを呑みながら西鎌尾根を歩いてきた相部屋の登山者から「今夜TJARの選手がここを通過する」って聞いていたのだ。
<2022.8.8_朝5:50撮影(2)>
2枚目の中央にヘッドランプを付けている男性の横顔が見える。1枚目は双六岳に向かう登山道を写したつもりだった。でも、こちらは偶然にも同選手が正面を向いている。ハッキリ自信がないけど、これって望月選手なんじゃないか。
TJARのサイトをチェックしてみると、 望月選手は6:14に双六小屋を通過して樅沢岳の辺りを走っている。もしかしてもう1人の選手がすぐ後ろに並走しているので、そちらの方かも知れないが、おそらくそうだと思う。なかなかラッキーな山行だった。
<双六岳~樅沢岳のGPSトラッキング・データ>
※出典: https://ibuki.run/ev/8962784157632477979/map#tracked=22
Appendix C:柏原新道で子熊と遭遇(2024.8)
この記事を書いてから2年後、2024年8月に鹿島槍ヶ岳南峰に登った。その帰路に柏原新道で子熊とニアミスしたので、別の記事としてアップした。クマ関連として以下にリンクを紹介する。
【2022.12.28】「双六小屋でTJARのランナーとすれ違った」をAppendix Bとして追記した。写真は後で挿入予定。
【2023.1.22】TJARに関わる写真3枚を追加した。
【2024.8.17】つい先日、鹿島槍ヶ岳に登って柏原新道で子熊と遭遇した件をAppendix Cとして追記した。花びらとフィボナッチに関する弊Amebaブログ記事のリンクを付けた。合わせて、目次を追加した。