双六岳・三俣蓮華岳へ登る

裏銀座を歩いてみたい。そんな憧れはあったけど、如何せん山小屋に連泊になるしハードな山行になりそうだ。体力不足のヤマ人にとってはどこで泊まるのかも悩みどころだった。初日は鏡平、2日目は双六小屋、もうバテてしまったら3泊目も考えよう、そんなザックリ計画で出発。
尚、この記事はAmebaブログに7回に亘って投稿した記事を再構成したものです。写真をかなり絞り込みましたので、その他の写真は同ブログでご参照下さい。

初日(新穂高登山口~鏡平)

時期: 2022.8.初旬
初日: 新穂高登山口(9:10)→わさび平(10:35)→秩父沢(12:05)→イタドリヶ原(12:55)→シシウドヶ原(13:45)→熊の踊り場(14:15)→鏡平(14:45)

過去にこのバス停で降りた事がある。2019年8月の事で、ドシャ降りの雨で身動きが取れなかった。その日は平湯温泉に退避して翌日の晴れを祈ったものの、虚しくドシャ降りの雨が続いていた。宿の女将さんには「朝ニッコリと昼ニッコリには気を付けろ」ってヤマの格言を授かり、1歩も登ることなく撤退している。それから3年、今度こそと双六岳に向けて歩き始めた。

わさび平小屋の冷えた野菜を食べたいものの、まったりすると歩けなくなりそうで見送る。この小池新道はいい具合に石を配置してくれているので、リズムよく登っていける。日本の登山道は海外(私が知っているのはNZ、ネパール、カナダ、スイス、イタリア)と比べて荒れているけど、ここはかなり丁寧に整備されている。黒い小さな蝶は立山でもよく見かけた種類だ。
双六小屋グループではHPに丁寧な地図をアップしてくれており、長いルートでもほぼ1時間ごとに目印となる場所を置いてくれている。それも登りやすい理由だ。
ようやく鏡池・鏡平に到着。ここがこの日の宿。天気が良ければ槍が望めるけど、生憎の空模様だった。
先ずは名物のかき氷を喰らう。夕食も美味しかった。主菜も勿論いいんけど、ハードに登って来ただけに冷たい稲庭うどんがありがたかった。
はて、明日も晴れてくれるだろうか。

<歩きやすい小池新道、鏡平山荘の夕食>

2日目(鏡平~三俣蓮華岳)

2日目: 鏡平(6:40)→弓折乗越(7:40)→花見平→熊に遭遇!!!(8:15)→双六小屋(9:05)→双六岳(10:20)→三俣蓮華岳(12:20)→三俣峠(13:05)→双六小屋(15:20)

疲れていたので鏡平山荘の2段ベッドでぐっすり眠る。下界は暑いけど、標高2300m前後だと蒸し暑さとは無縁なのがありがたい。 
今日も快晴。ひょうたん池からこれから登るであろう山を見上げる。そもそも双六岳ってどこにあるのか、地図で目測できない素人はのんびりと歩き始める。
最初はちょっと急登。朝からキツイ。ただ、高山植物が豊富なのがありがたい。弓折分岐で腰を下ろすと。白いハクサンイチゲの群落があった。花は次回紹介していくつもり。
花見平の前後は登り切ったあたりでほぼ高低差はない。花見平はまだ残雪もあって、この辺りだけ季節が戻った感じだ。
そして事件が起きた。花見平の少し先でクマに遭遇したのだ!
これに関しては以下ブログを参照。ここから少し下っていくと双六小屋とその前のテント場が見えてきた。この日の宿へ早くも朝9時に到着した。さて今日はどこまで登れるか。

さて、今回の裏銀座の旅、目的地である双六岳に登ろう。白っぽい岩地が続く。斜度は普通で、まだまだ午前中なのでのんびり登る。
勾配がなくなって山頂に着いたと思ったのだが、ガスに覆われた平地が広がっているだけで山頂の碑は見当たらない。草地が点々と広がっていて、これは確かに写真で見た双六岳に間違いない。ただ、ヤマケイなどの写真で見えると信じてきた槍ケ岳はガスの中。
標高2860mの双六岳山頂の碑はモノクロの世界で撮影したみたいだ。山ガール3人組と出会う。
まだ時間は早いし、ここから稜線づたいに三俣蓮華岳へ登ろう。今回の目標は双六岳だったけど、思いのほか順調だったのでもうちょっと北上したい。三俣蓮華岳は写真で見た事あるけど、裏銀座はとても自分の足で行ける場所だと思っていなかったので、ちょっとワクワク。まだ雪が残っている岩と緑のこういう稜線が好きだ。

<三俣蓮華に向かう稜線、あれが雲ノ平か>

標高2841mの三俣蓮華岳山頂に到着。こちらはガスに覆われて視界ゼロだった双六岳と対照的に晴れてくれた。ここに来て雄大な眺めに接して、初めて自分が裏銀座にやってきたんだと実感が湧いてきた。山頂には年配登山者3人組(オバちゃん2名と爺さん)、お姉さん2人組、若者グループ1組など10名くらいいた。
元気な年配登山者の中にはなんと80代の人もいてなかなかの強者。これから黒部五郎小舎に向かうのだと言う。「あんた、私らの荷物を持ってくれるなら一緒に小舎まで来ない!」と笑いながら誘ってくる。うーん、もうそんな体力は残ってないんだな、こっちには。
三俣蓮華岳山頂から見る景色は全く初めてのもの。槍こそ雲に隠れて見えないものの、西、北、東と見える。雲ノ平、薬師岳、鷲羽岳……、登山者に教えてもらったのだが、なかなか要領よく覚えられない。もしかしたら写真の説明が間違っているのもあるだろう。雲ノ平はどんなところか漠然とした憧れはある。今回はここまで来られた事で十分だけど、今度は先の世界に分け入っていきたい。そう誓った。

まあもうちょっと言えば、この日の宿を三俣山荘にすれば良かったって思いはある。そうすれば雲ノ平は射程圏内に入ってくる。でも、この旅のゴールはあくまで双六岳であって三俣蓮華岳まで届いたのは想定外だった。次は必ず行こう!
帰りは巻道を選択。三俣峠に降りて、トラバースルートを進む。朝6:40から登ってきただけに、午後に入るとバテてくる。この巻道がずっと平らだったらよかったのに終盤に登りがあった。あの登りが辛かった。
小屋では6人部屋に4名。槍ヶ岳から西鎌尾根を抜けてきた京都の人は明日、太郎平小屋まで突っ切ると笑っていた。逆に折立からここまで南下してきた富山の人も熊トークに淡々としているなど強者揃いだった。夕食前に鷲羽岳を眺めながら缶ビールを傾けたり、部屋の中で情報交換したり先輩方に感謝。以前にクマの事を書いたが、その一部はここで同宿になった方々から伺ったもの。

花の百名山にはいろいろな花々

双六岳は花の百名山の看板に偽りない。白馬岳と同じくらい豊富な高山植物だった。8月上旬と季節に恵まれたのも良かった。以下のサマリ写真は以前にも紹介しているもの。

<この山行で見つけたエリア別の高山植物>

ジャコウソウは珍しい。私としては上高地の明神付近で見つけて以来2回目だった。ゴゼンタチバナはいつも日が当たらない場所で静かに咲いているけど、この日は稜線どころかわさび平小屋に着く前に発見した。
シモツケソウは淡いピンクと白がメジャー。それに対してここで見つけたのは色鮮やかなvividな種類だった。これは初。
ミソガワソウは礼文島の桃岩コースで見掛けるけど、本州ではあまり記憶にないな。
ヤグルマソウってこういう白い花を付けるのか。
カニコウモリとセンジュガンピも上高地や常念で見られる花だな。

わさび平小屋の前後でもっと赤色が強いシモツケソウに出会った。こちらの淡い色合いが普通。
この2つのそっくり返った小振りな花はここで初めて見つけた。トコトコ登っていく人だと見過ごしているかも。白い方はネットで検索して名前が分かったけど、茶色いのは謎のまま。これ、今年の乗鞍岳でも見つけた。
イワオウギもそこそこ高度を上げて行かないと出会えない花だ。白馬岳以来のご対面。

ハクサンフウロは地味だけど好き。最初に知ったのは礼文島のチシマフウロで長いこと同じものだと思い込んでいた。でも、改めて礼文島に行ってみたら花が大きいし、1つの茎に3面に向いて咲いていたので、構造も違うんだろうとようやく気づいた。

ここでも雷鳥とご対面

そして、稜線では雷鳥とご対面。立山だと人に対して警戒心がないけど、ここではゆっくり逃げていくのでカメラで捉える事ができたのは後ろ姿ばかりだ。
北アルプスを歩いているとだいたい雷鳥と出会える。これまでにも、立山、蝶ケ岳、白馬岳、唐松岳などでご対面している。2023年4月の立山ではなんと冬毛100%、純白の雷鳥にも出会った。この写真もそのうちに紹介する予定。

<雷鳥トコトコ(2)>

最終日(下山)

3日目: 双六小屋(6:45)→弓折乗越(7:50)→鏡平(8:45)→わさび平(12:55)→新穂高登山口(14:25)

夕べ、同宿となった登山者から日本海を出発したTJARの選手がちょうど8/7朝に双六小屋の前を通過すると聞いていた。双六小屋では直接そのイベントに関与していないので、レース状況はハッキリ分からない。幸いな事にこの日の朝JTARの選手と遭遇した。それについては以前のブログで書いたのでそちらを参照。
さて、朝食も摂ったしあとは淡々と下っていくだけ。下山が苦手な者としては果たして登山口に辿り着くものか、どこかでバテてもう1泊するのか正直なところ読めていなかった。山歩きも大抵は6時間を超えると足取りが重くなって機嫌が悪くなる。そんな不安を抱えつつ鏡平に向かった。
東の方に今日は槍が見えた。昨日クマと遭遇した現場では緊張。そりゃあ同じ場所で食べている確率は低いけど、ジワリ汗が出る。
わさび平の手前辺りで、花見平ですれ違った60代のご夫婦とまた一緒になる。いろいろ話しながら歩いて行った。私が「登りはキツクてもいいんだけど、膝の靭帯が切れているので下りはロープウェイを作って欲しい!」って言うと、そのご夫婦が突然の大爆笑。人によって登りが得意、下りが好きってあるんだよな。それでもやっぱり下り好きの人が多いのか。
このご夫婦と一緒にわさび平小屋でゆっくり休憩。とにかくここのスイカが美味しかった。くり抜いた丸太で冷やしてあったスイカだ。これで乾いた体が生き返った気分。この小屋に1泊するのもアリだけど、折角なのでここはあと1時間なので下山してしまおう。風穴の涼しい風に元気をもらって無事に新穂高登山口に戻ってこられた。
初めての裏銀座はなかなかいい景色に溢れていた。双六岳は確かに花の百名山だったし、天気も申し分なかった。来年は雲ノ平だな! そう誓いながら飛騨牛で遅めのランチで締めた。

<槍を拝む、わさび平小屋ですいかを喰らう>

※Amebaブログにアップした参考ブログ3本(2019年の夏、フウロソウあれこれ、NHK「ヒューマニエンス」の花びらの数とフィボナッチ数について)

https://ameblo.jp/cx0293/entry-12509866364.html

https://ameblo.jp/cx0293/entry-12696090841.html

https://ameblo.jp/cx0293/entry-12777253662.html

【2023.9.19補記】何点か微修正を加えました。

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